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私立中高ベテラン教師のつぶやき

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スポーツ校における「体罰」について思うこと


大阪の高校で体罰を苦にして生徒が自殺した。これを発端にテレビや新聞で続々と体罰問題が報じられ、ついには国会の議題にまでなっている。このコラムでも現場の一教師として一言つぶやいておこう。


この学校の雰囲気がなんとなくわかる
今回の事件の新聞報道によれば「問題のバスケ部顧問教師は普通科ではなく体育科という特別コースに属し、かつ高校バスケ界の有名な指導者であること、そして、その部が全国大会の常連である」という。
筆者はこの情報だけでこの学校の雰囲気がなんとなくわかる。要はこの学校がいわゆる「スポーツ」を売りにする学校であり、この点が今回の事件の一因であるような気がしてならないのだ。以下は筆者の勝手な想像である。間違っていたら勘弁願いたい。

筆者はこの問題の教師がどんな人物だか知らない。しかし、彼がとにかく試合で結果を出さなくてはならない特別な教師であることだけは確かである。結果を出すことが彼の学校における職務であり、彼自身としてもそれが自らのプライドであり存在理由だったはずだ。つまり、彼は外からも内からも結果を出すことを迫られていたのである。

また、自殺した生徒自身も(酷な言い方かもしれないが)この特別なコースに希望して入った特別の生徒であろう。もしかしたら、この問題の教師が中学からスカウトし、スポーツ推薦で入学させた生徒かもしれない(スポーツ有名校ではごく普通のことだ)。彼も周囲から期待され、また、彼自身も部活に命を賭けていたのではないだろうか。彼にはどんなに辛くても部活を辞めるという選択肢はなかったにちがいない。だから辞めることもできず、耐えることもできず、進退窮まり、命を絶ったのであろう。

筆者があえてこんな想像をするのは、その昔、筆者の勤務校にもこういう「特別の部活」があったからである。


東大か甲子園か
学校が名前を売る方法として俗に<「東大」もしくは「甲子園」>というのがこの業界の常識である。すなわち、「進学」校で有名になるか、「スポーツ」校で有名になるかということだ。

ご多分にもれず、筆者の勤務校でも当時の校長が「甲子園」に決めたのである。顧問教師を他校からスカウトし、生徒もスポーツ推薦で集めた。顧問教師は授業時間も少なく、担任もない。校務分掌もないに等しい(本物のスポーツ有名校は、授業も校務分掌もまったくないらしい)。彼は学内で特別扱いである。彼の行動は試合に勝つためならば、すべて黙認される。ましてやその指導内容に余人は口を挟めない。試合に負け続けていれば、さすがに批判も出るかもしれないが、連戦連勝していたら校長ですら口が出せない。いわばこの部活はこの教師の独立王国である。

生徒も彼の口利きのおかげで入学できた、いわば彼の子飼いの家来である。もちろん、その保護者も同様である。生徒も保護者も彼のいかなる指導にも従うほかはない。その上、とにかく彼は勝たなければいけないのである。勝たなければ彼の首は危ないのだ。こういう環境から体罰やしごきが生まれない方が不思議であろう。


スポーツ校はなくならない?
幸い、筆者の勤務校の場合、校長も交代し、部活も敗退を続けたので、この「特別の部活」はなくなった。おそらく今回の事件のような体罰が部活で生じる可能性は極めて少ないと思う。しかし、全国の「スポーツ」を売りにする高校には、今回の事件のような先生や生徒が少なからずいるだろう。今回の事件は氷山の一角に過ぎないような気がする。もちろん、「スポーツ」を売りにする学校をなくすことは現実に不可能に近い。学校業界、プロスポーツ業界、プロを目指す子ども達や保護者、それぞれの利害や思惑が絡み合い、巨大な市場を形成しているからだ。

しかし、いかなる理由や名目があるにせよ、学校の中に特別な部活が存在し、特別な責任と特別な権利を持つ特別な教師がいる限り、この種の体罰を学校から根絶するのは難しいかもしれない。

ちなみに、聞くところによれば、自民党の「いじめ防止法案」審議で「体罰」を「いじめ」に入れるかどうか、その定義でもめているらしい。こういう話を聞くと現場の教師としては本当にあほらしくなる。あえて一文を草した次第である。

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