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私立中高ベテラン教師のつぶやき

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学校現場で起きている「本当の大問題」とは?



「いじめ」でも「体罰」でもない大問題
今、学校現場で起きている大問題とは何か。それは<いじめ>でもないし、<体罰>でもない。それらは単にメディア受けするため、世間で過剰に騒がれているだけである。もちろん、当事者にとっては大問題であろう。しかし、大局的に見れば、しょせん一部の学校や生徒たちだけの問題にすぎない。では、本当の大問題とは何か。それは<勉強意欲の低迷>である。これこそ学校教育の根幹に関わる問題であり、おそらく、日本の多数の教師が悩んでいる問題にちがいない。


受験のお蔭で学力維持できている実情
朝日新聞(2012年12月12日付)によれば、2011年の国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果、日本の小中学生の「学力低下」に「歯止め」がかかったものの、中2は「意欲低迷」しているという。「算数・数学の勉強が好き」は小4で66%だが、中2で39%、理科では、小4で83%なのに、中2は53%。中2の割合は、数学、理科ともに国際平均よりも20ポイント以上低かった。また、この調査は「カリキュラムの習熟度を測る調査だから、日本や韓国などの受験至上主義の国は好成績になる。意欲と比例しない」ともいわれている。
すなわち、日本の中学生の学力は、「受験」のお陰でなんとか維持しているものの、勉強を<やる気>はまったくないということだ。日本の将来を思えば、<いじめ>や<体罰>よりも、こちらの方がよほど由々しき問題にちがいない。


現状で満足してしまう生徒たち
先日、校内の会議で、「本校の理系コースの高校生には、考えることを面倒くさがる、考えることを放棄している生徒たちがいる」と発言したベテランの物理教師がいた。「かれらは授業で一度解いた問題でも、その数値や条件を少し変えて出題すると、もうお手上げになる。なぜならば、かれらはその先をさらに考えようとする意欲がない。すぐ簡単にあきらめてしまうからだ」。また、「授業にどのような面白い仕掛けをしても乗ってこない生徒が増えた。もう授業をしていても楽しくない」と嘆息した。

ご注意いただきたいが、かれらは決して「できない」生徒ではないのである。ただ、「がんばろうとしない」だけなのだ。現状維持で満足してしまう生徒、自分の能力を出し切らない生徒。こんな中高生たちが増えてきたことは、近年、私もうすうす感じていた。だが、よもや理系コースの高校生でこの有様だったとは。しかも、この発言をした教師は、身近な道具を駆使した面白い授業で、生徒の評価も高い教師なのである。改めて、その深刻さに愕然とした。


現場教師に何ができるか?
<勉強意欲の低迷>の理由はいろいろあるだろう。ゆとり教育の名残。少子化による大学受験の易化。また、「勉強意欲は、発展途上国や国内総生産(GDP)が伸びている国ほど高くなる」ともいわれている。

しかし、私たちは現場教師なのだ。のんきに理由をあげつらっている暇はないのである。なんとか対処しなくてはならない。

とはいうものの、いったいどんな対処法があるというのだろうか。たとえば、<授業の面白さを工夫し、興味関心を掻き立てる>としよう。しかし、どんなに教師が授業を面白く工夫しても、生徒自身が実際に練習問題を何回も解かなければ、本当の学力は身につかない。勉強は面白いことばかりではない。時には辛い忍耐が必要なのである。これはかなり勉強意欲を殺ぐにちがいない。

また、<成績評価を厳しくし、落第で脅かす>という手もある。しかし、成績評価を厳しくしても、いたずらに落第該当者の数を増やすだけであろう。全体が向上するという保証はどこにもない。ますます勉強意欲を減退させるだけかもしれない。

ことほど左様に<勉強意欲>を向上させるのは難しいのである。喩えるならば、われわれ教師は、生徒のための水飲み場を用意することはできる。そして、そこまで生徒たちを引っ張ってくることもできるかもしれない。しかし、実際に水を飲むのはあくまでも生徒本人自身である。初めから水を飲む気のない生徒に水を飲ませることは不可能なのだ。

前述の朝日新聞の記事の最後で、某大学の教授は「日本では今後、意欲が向上するのは難しい。『学ぶ意味』を教えることこそが求められている」とまるで他人事のようにおっしゃっている。しかし、『学ぶ意味』とは何なのか。おそらく、それは『生きる意味』とは何かと問うことと同じぐらいの難問にちがいない。一体そんなことを教えることができるのであろうか。凡庸な現場教師は途方にくれるばかりである。


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